2010年1月8日金曜日

世界で一番うんめーもん!!豚カツ


世界で一番うんめーもの
豚カツ

私がそう思ってるわけでも、かつてそう思ったわけでもない。4歳と9歳違いの姉たちに誘われ、肉屋さんに豚カツを買いに行った。外は吹雪いていたが、コロッケしか食べたことがなかったので興味に任せて姉にくっついて行った。

12歳違いの大好きな兄が毎日毎日信じられないほど一生懸命コタツにしがみついて勉強していた、受験勉強だった。こちらは入学前で毎日雪の中で遊んでいたものだから大人は大変だな!漠然とは解っていたが口にすることはなかった。『豚カツ食えれば大学なんて合格するさ!』せめて食欲でフラストレーションを吹き飛ばしたかったんだろう。合格が見えていたがあと一息という感じの言葉だった。一番上の姉が仕切ってお金を出し合って『豚カツ』を買うことになった。昭和30年前後豚カツ一枚100円は行かないと思うが二人の姉は5円位しか貰っていなかった私に10円、『マサオも出せ!』本気でシュンとしてしまったが行きがかり上しょうがない。見届けなければと肉屋に同行した。

揚げたてを包丁でうやうやしくサクサクと切るのが見えた。経木に包まれた豚カツは雁木に吹雪く雪にも負けないくらい暖かく、幸せってこんな感じ、きっと大学に合格すると確信した。姉から兄に手渡されると兄は恐縮しながらも妹、弟にかまわずその場で開いて食べる勢いだった。姉たちは立ち去り、私は子供を決め込んで炬燵に入った。一切れ食べ、二切れ・・目の前の私に遠慮しているのか、反応がない。六畳の和室に12歳違いの二人がいるだけで誰も見ていない、大人と子供が二人、豚カツが目の前からなくなろうとしている。食べたことのない子がここにいる。元気印で町内中をわめいている子供が今はおとなしくしている。 『うんめー、うんめーの?』聞いているのだ、確かめたいのだ、なけなしの10円分。

・・・食ってしまった。一切れ美味しそうなとこを、よだれをたらしそうな弟に食べさせてくれた。『うんめー!』『うんめーろー!』二人で顔を見合わせ納得した。私が食べたことは姉にばれてしまい、『その一切れ』が願掛けを台無しにしたらどうすると、きつく攻められてしまった。不覚だった。『落ちたらどうしよう』 とは言えなかった。無性に涙が出てしょうがなかった、本当に後悔した、後悔なんてものはこのときが初めてかもしれない。

兄は大学が休みになると仙台から長岡に帰ってくる。私は食事の時の家族の会話から帰省情報を得、幼いながらも感を働かして、この日この時間と長岡駅に迎えに行った。ほとんど外れたがそれでも嬉しかった。

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